ちょっと一言

orzのあの人について語ったり語らなかったり。



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櫻の季節

旧知の仲なのだ、という顔をされてもこちらは困るのだ。


入学以前に二度会ったことがあるというだけなのにもかかわらず、酷く懐かれている。どうしたらそんな風に簡単に人を受け入れられるのだろうか。北原のことを何一つ知りもしないのに。

一年次の必修の大教室の授業にもかかわらずぴたりと横に坐り、ルーズリーフと筆記具を用意して所在なさそうにそわそわしている。大きな身体とその動作が酷く不釣り合いで視界の端が酷く落ち着かない。
「大学の授業ってどんなんだろうなー。俺ついてけるかなぁ」
前半をあんまり楽しそうに、後半を必要以上に不安そうに島崎は言った。
その素直な感情の発露に、何故か苛立つ。
少しだけ、郷里の血縁者を思い出したせいかもしれない。
入試をくぐってきたのだから平気だろう、という意味のことを北原が言うとあんまり屈託なく島崎は笑った。
「俺、まぐれで受かった気がするからなぁ、」
一人くらいはそんなのが居てもいいんじゃないか、とこの上なく嫌味な口調で言ってやろうとした瞬間に階段教室の前方のドアが開き、教授が静に入ってきた。
北原の隣で島崎が無意味に「おぉ」と呟いたので、北原は大袈裟な仕草で肩を竦めた。

新入生歓迎コンパ第一弾、と題された飲み会が狭いサークル室で開催された。入学以前から入るサークルだけはしっかり決めていたのは北原だけではなかったようで、ここでも島崎と一緒だった。
相変わらず隣にいて、物珍しそうに部屋の中を見ては「わぁ」とか「すげぇ」とか呟いている。
はっきり言って煩い。
北原は入れ替わり立ち替わり話しかけてくる先輩たちを適当な笑顔と、最近身につけた口調で軽くかわしていた。早くも北原には「奇人」の評価がついたようだった。
自分の中から出てくる感情表現を統制して、そう言われるように振る舞っているのだから、想定通りの評価に安堵する。
目の前にいる、奇麗な髪をしたきつめの美人がこちらを見ているのに気付いて、北原は薄く笑みを浮かべながら酒を一口啜った。

丁度、酒の席にふさわしい下らぬ仮定が耳に飛び込んでいた。

――もし、世界に一人きりだったらどうする?

隣で大人しく酒を飲んでいた島崎が殆ど反射的に口を開いた。

「そんなん寂しいじゃないですか。誰か捜しに行きます!」
「島崎くんだっけ? 面白いなぁ。一人だって言ってんじゃん」
「じゃあ、石川君はどうするの?」
石川と呼ばれた青年の横に坐っていたまともそうな大人しい感じの女子が口を開いた。石川は少しだけ考えてから口を開いた。
「んー、ものすごい空いている町を堪能する」
「だからそれだって一人じゃつまんないし、寂しいじゃないッスか」
「だって、もし一人だったらっていう仮定だよ? 仮定から覆しても仕方ないじゃん」
「でも一人だったら何やっても楽しくないですって」
あんまり真剣に素直に向かっていく言葉に北原は虚を突かれる。
余り知らなかったタイプの人間だ。少なくとも北原の身の内にはこういう人格はない。それが酷く新鮮だった。
一人でもそれなりに楽しめる。
それを覆すつもりはないけれど。
なんだかとても面白い人種だと思った。
「ふうん」
鼻から抜けるような声を出す。視線が一気に集まった。
北原は身につけたばかりの薄い笑いを浮かべた。
柔らかそうな肩までの髪を微かに揺らして、石川の横にいた女性が口を開いた。笑顔まで柔らかい。
「二人はずっと友達なの? 高校が一緒とか?」
北原はニヤリと確信犯的な笑みを浮かべた。隣で島崎が口を開いたのを確認してかぶせるように口を開いた。
「友達です」
「知人です」
にっこりと言い放って、横で島崎が絶句したのが分かる。
一瞬あっけにとられていたらしい石川がけたけたと笑い出した。
「ねぇ、島崎くん。僕たち知り合いだよねぇ」
悪意のない顔を殊更に作って島崎を振り返ると、彼は物凄く腑に落ちなそうな顔をして頷いた。

感情をストレートに表現する術など自分自身の中にはありはしない。
だからこそ、面白いのかもしれない。

真横で少し落ち込んだ顔をしてビールを飲んでいる島崎を見て、北原は今度こそ大きく笑った。
あさき : 北原 : 13:48 : comments(0) : -
島崎くんと北原くんと中原さん。
生協のアイスケースの前に陣取って、どのアイスにしようかと真剣に悩んでいる中原の横にすっと寄ってきた者がいる。寄ってきただけでは飽きたらず、パーカーの袖をくいくいと引っ張る。
「中原さん、きいてくださいよう」
嬉しくてたまらないという悪趣味なニヤニヤ笑いを浮かべながら、北原が口を開いた。
「何や」
「あのですね。島崎くんが高校生の時に北海道に行ったのに、マリモを買ってこなかったと嘆くので、親切な僕は彼にマリモをプレゼントしたのですよ」
「あぁ、あんときなー」
中原は眇になって記憶を手繰り寄せようとする。北原はぷくくと笑いながら言葉を続けた。
「で、ですね、生き物だからちゃんと飼ってねと言って、僕は昨日様子をみにいったのですよ、彼の家に。そしたら、ですよ。あの大きな体を折って、こぉぉんな小さな水槽のマリモの水を取り替えているのですよ。笑えますねぇ」
北原は大袈裟な身振りで拳大の水槽を表した。終始、可笑しそうにニヤニヤしている。
こいつもけっこう悪趣味なヤツだな、と中原が再認識したときに、大股で噂の渦中の人物がやってきた。
「あ、中原さんと北原だ」
見れば分かることを口に出すのは莫迦だねぇ、と隣で北原が呟いている。
その口で、胡散臭いまでの爽やかさで北原は言葉を足した。
「島崎くん、キミん家のマリモ元気?」
「え。」
島崎は宙を睨んだ。
そして困惑したように中原を見る。
「中原さん、マリモってどうしてると元気なんスか?」
「さぁ、浮いたらじゃねぇの?」
島崎は「そっか」と呟くと再び記憶を手繰り寄せるように宙を睨んだ。そして幾分、下にある北原の顔を見据えた。
「ごめん、北原。あれ、まだ元気じゃないや」
島崎の返答を聞いた瞬間に北原はそれはもう酷く可笑しそうに笑い出した。

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あさき : 北原 : 00:27 : comments(0) : -
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