ちょっと一言

orzのあの人について語ったり語らなかったり。



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お花見。
ほんのちょっと離れただけのつもりだった。

両手に500mlのビールの缶を持てるだけ持って、宮沢は途方に暮れた。
新学年のガイダンスを終えたあと、サークルのメンバーが花見に行くと云うので、断る理由もなくそのままついてきた。先程まで馬鹿話をしながら目の覚めるような青色のビニールシートの上で飲んでいたのだ。酒を買い足し行くと自ら言い出して一番近くの売店に買いに来ただけだ。距離にして数百メートル。
それでどうして迷うのだ。

左右を見渡しても、煙るような薄紅ばかりが目について見知った顔など何処にもない。
冷え切ったビールの缶が長袖シャツに包まれた腕を冷やす。アルミ缶に細かく付いていた水滴が黒いシャツに染みを作っていく。

ふと、あらぬ考えが頭をよぎる。
みんなでこの場所に来ていたと思ったのは自分の錯覚、妄想の類ではないだろうか。

本当はたった一人で。

あんまり寂しくて膨らませた妄想の一つなのではないだろうか。

視界が滲んだ。

本当は、多分きっと、一人だ。

ずいぶんと余裕のある黒いシャツの袖で頬を拭う。
洗いざらしの布地がチクチクと目の周りの柔らかい皮膚を刺激する。

――東京都からお越しの、宮沢謙司さま。お連れ様がお待ちです。

涼やかな女性の声に現実に引き戻される。
やけに鮮明に景色が見えた。

――東京都からお越しの、

鮮明になった視界の端に、見慣れた男たちの集団があった。ブラックジーンズに包んだ細い足で大股にそこまで辿り着く。
倒したらしい紙コップの始末をしていたらしい石川が間延びした声で「宮沢だぁ」と云ったのを無視して、大きく口を開いた。

「んだよ、勝手に迷子のアナウンスなんかかけんなよ。俺が迷子にでもなると思ってんかよ」
「だって、お前、全然帰ってきぃへんから。そこらへんで泣いてんやないかと思ったぞ」
泥酔組から若干の距離を置いて飲んでいた中原が笑いながら声を発した。
大量のビールを抱えながら仁王立ちになっている宮沢の手から次々にビールを奪い取りながら谷崎が口を開いた。痩身に纏った春らしい白いジャケットが嫌味なくらい似合っている。
「駄目だろ、宮沢。ちゃんと迷子センター行かないと。竹久さんがそっちで待ってんのに、」
「うるせぇ、知るか」
「ほれ、宮沢」
中原にぽんと携帯を投げつけられた。
「何スか」
「竹久。戻ってくるように連絡したんよ。謝れ」
「なんで! そっちが勝手に迷子扱いしたんじゃないッスか」
云いながら携帯を耳に押し当てると、電話の向こうで「あ、ホントだ。宮沢の声だ」と云っている竹久の声がした。
「俺ですけど」
ぶすっとした声で名乗ると、スピーカーのむこうでけたたましく笑う声がした。あんまり人を莫迦にしていると思って宮沢が終話ボタンを押そうとした瞬間に転がり出すように言葉が響いた。
「良かったじゃん、帰れて」
「うるせぇよ」
聞こえてきた声に、うっかり泣きそうになって、宮沢は終話ボタンをしっかりと押して、中原に携帯を投げつけて返した。
腕の中に一本だけ残っていたビールのプルトップをあけて煽るようにして飲んだ。視界の端をちらちらと薄紅の切片が落ちていく。

馬鹿野郎。
俺は一人なんかじゃないぞ。




>>>若干時季外れですが。
ネタ提供、お友達。サンクス★
あさき : 宮沢 : 13:19 : comments(0) : -
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